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2009年1月 1日 (木)

クラシック漫遊ガイド(5)見てから聴くか?聴いてから見るか?

映画やテレビで話題の曲を聴いてみましょう。「のだめ」のベートーヴェン交響曲第7番や、プッチーニのトゥーランドットもここから期間限定、無料で聴けますよ。 (編)

クラシック音楽の名曲というのはそれこそ星の数ほどあるけれど、(何度も言うように)生まれたのはそのほとんどが100年とか200年のむかし。だからこそ「クラシック(古典)」というのであって、ポップスと違って「今週発売の新曲!」というような注目を受けたり話題になることはない。
ところが、そんなクラシック名曲も、時々ポップス並みの注目を受け、コンサートでもてはやされたり、CDがショップに平積みにされて売れることがある。
そのきっかけは大体、映画あるいはテレビだ。

最近、クラシック界のそんな現象を一手に引き受けた感があるのが、コミックスの「のだめカンタービレ」(2001年より連載。作:二ノ宮知子)。
コミックスとして連載中にも話題になったが、特にTVドラマ(2006年。フジテレビ)の冒頭テーマ曲として使われたベートーヴェンの交響曲第7番が大ヒット。一時は、携帯電話の着信メロディの人気ナンバーワンの座を獲得するほどの人気を得、この曲が演奏されるオーケストラの演奏会が若者でいっぱいになるという珍現象までもたらした。
かつてはベートーヴェンと言ったら、「運命」「田園」「第九(合唱付き)」が人気で、第7番(通称ベト7)は陰に隠れたマニア向け名曲だった。ところが、今や日本全国津々浦々の子供たちにまで「ベトベンの7番」として知られるようになった。テレビの影響おそるべし。

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ベートーヴェンの「交響曲第7番」第4楽章の楽譜の1ページ。
テレビ版「のだめカンタービレ」最終回のこの曲の演奏シーンで、チェロとコントラバスが回転していたが、実際はこの通りずっと弾きっぱなしで、プレイヤーは手が離せない。

楽譜出典:FREE-Scores.com

一方、同じテレビの影響でも、ドラマ発ではないヒットもある。その代表格が、2006年トリノ・オリンピックのフィギュア・スケートで脚光を浴びた「トゥーランドット」(プッチーニ)。これは、金メダルを取った荒川静香選手がこのオペラの美しいメロディをバックに名演技を見せたため、いきなり大注目を受けたもの。
この「トゥーランドット」は中国を舞台とするグランド・オペラで、メロディが登場するのは終幕の「誰も寝てはならぬ」というアリア。それ以前はプッチーニのオペラと言ったら「蝶々夫人」「トスカ」「ボエーム」が人気だったが、これでいきなり「トゥーランドット」がトップの座に躍り出ることになった。

また、ポップス界発のヒットとしては、「ジュピター」(2003年。平原綾香)の原曲として大浮上した組曲「惑星」(ホルスト)の中の「木星(ジュピター)」が記憶に新しい。
この曲、もともと名メロディとして知られてはいたが、長らく作曲者が原曲のオーケストラ組曲として以外の演奏を禁じていたもの。しかし、版権が切れた2003年からその禁も解け、世界中でポップスにCMにと使われるようになって一躍知られるようになった。

過去にも、そんな「クラシック名曲再評価」の例は枚挙にいとまがない。例えば、SF映画「2001年宇宙の旅」(1968年。監督:スタンリー・キューブリック)で、壮大な地球の夜明けシーンで使われた「ツァラトゥストラはこう語った」(リヒャルト・シュトラウス)。超重低音の地響きが唸る上で、荘厳なトランペットのファンファーレが鳴り渡りティンパニが連打されるその曲は、一度聴いたらちょっと忘れられない。
原曲は40分以上かかる長~い(そして、決してわかりやすいとは言えない)交響詩で、印象的なのは冒頭の数分だけだが、今でも、仰々しい(悪く言えば、コケおどし的な)オープニングを狙う時、この曲はよく使われる。

そして、1970年代のマーラー・ブームのきっかけとなったのが、映画「ベニスに死す」(1971年、監督:ルキノ・ヴィスコンティ)。
トーマス・マン原作による耽美的かつ退廃的な映像美の映画だが、そこに滔々と流れる交響曲第5番(マーラー)のアダージェットが、あまりにもそんな耽美と退廃の世界にピッタリで、(それまでは時代遅れと思われていた)後期ロマン派の濃厚で甘美なオーケストラサウンドの再評価にも繋がった。

この「アダージェット」の人気は、のちにCD「アダージョ・カラヤン」(1989年)というヒットも生み、クラシック名曲の(つまみ食い的な)オムニバスものCDを大繁殖させるきっかけになったことも特筆すべきだろう。

02 03 04 05

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ナクソスから出ている、作曲家別のオムニバスCDアルバムの一部。
「のだめ」が放映された年には、J-POPに匹敵する人気を誇ったアルバムもある。
[※ジャケットをクリックすると、各トラックの冒頭30秒のみ試聴できます。]

そう言えば、いわゆる「映画音楽っぽい」クラシック音楽の代表格であるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の人気も、そもそもは往年の映画「逢びき」(1948年。監督:デヴィッド・リーン)でそのロマンティック極まりない音楽が使われたことがきっかけだった。

そのためラフマニノフと言ったら、長い間このピアノ協奏曲第2番だけが突出して有名だったが、近年、映画「シャイン」(1996年。監督:スコット・ヒックス)で主人公のピアニスト:ヘルフゴットが全編にわたって弾きまくった第3番が一躍大注目を受けることになった。

また日本では、TVドラマ「妹よ」(1994年。フジテレビ)で交響曲第2番のアダージョ部分のメロディが繰り返し使われたため、一時は「ラフマ二ノフの第2番といったら交響曲の方」と若い人に言われるほど有名になったことがある。これはちょっと面白い現象だった。

…と、映画やテレビに使われて注目を浴びるようになったクラシック名曲の話をし出すと、コラムのひとつやふたつではとても追いつかない。
最初にも書いたように、クラシックの名曲というのは、それこそ100年も200年も演奏され聴かれ続けてきた「名品」。何か「きっかけ」がありさえすれば、こういうヒットをしそうなクラシック名曲は、それこそ星の数ほどあるのである。

さて、次に突然浮上するのはどの曲だろう?
そして、そのきっかけとなるのは?

= 今月のお勧めアルバム =

画像をクリックすると、NAXOS MUSIC LIBRARY の各アルバムのページが開き、それぞれのアルバムは、全曲を冒頭30秒のみ無料で聴くことができます。

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R. シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」
演奏:デュッセルドルフ交響楽団
指揮:ジョン・フィオーレ

(※全楽章が切れ目なく演奏される作品ですが、システムの都合上、トラック間に数秒の無音部分が生じます。ご了承下さい)

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