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2009年1月 1日 (木)

クラシック漫遊ガイド(6)さらなるディープを目指して

吉松先生のクラシック講座、最終回は、信長が聴いた曲?から先生自身の曲まで知っていると一目置かれる通好みの名曲を無料試聴でご紹介。このライブラリの醍醐味です。 (編)

初心者としてクラシック音楽を聴き始める時は、まず色々な人が「名曲」と認める作品を聴けば、外れがないし間違いはない。
本で言えば、シェイクスピアやゲーテあるいは紫式部や芥川龍之介のように先生や評論家が名作と認定し文学全集に入っている百年も二百年も前の作品を読んでいれば、それはもう古今の色々な人が「名作」と認定しているのだから、教養にもなるし失敗することもない。それは確かだ。
でも、そればっかりじゃあつまらない。
例えば、人が本に出会う時というのは、もちろん世間で話題の…というのも多いだろうけれど、偶然本屋で手に取って「なんだか面白そう」と思ったり、知らない筆者だけどなぜか興味を惹かれて「読んでみようか」と思ったり、古本屋で埋もれていた稀覯本だったりするのではなかろうか?
その結果は、もちろん当たり外れがあって期待と違ったりすることもあるけれど、そんな出会いから思いもかけず感動の一品を発見したり、一生の愛読書ができたりする。
クラシック音楽だって、ちょっとした手間さえ惜しまなければ、そんな出会いがあちこちに転がっているのである。

例えば、バッハ以前のルネサンス・バロック時代の作品。さらに古い中世の音楽。クラシック音楽の元祖J.S.バッハが活躍したのは、日本で言うと江戸時代中期のいわゆる元禄時代から忠臣蔵の頃。「意外と新しいんだな」と思うか、「意外と古いんだな」と思うかは人それぞれだが、そのバッハ以前にもクラシック音楽は当然あったわけなのだ。
それが、15~16世紀のルネサンス音楽。まだピアノもオーケストラもない時代だから、教会の賛美歌のようなコーラスの音楽や、ギターの前身であるリュートや古風な響きのハープなどによる古風なアンサンブル曲が主流だが、これがなかなか優美でいい。日本で言うと織田信長の時代だ。(ちなみにNAXOSには、信長公が聴いたかも知れない「空想・安土城御前演奏会」などというアルバムがある)。
さらに遡ってもっと古い9~10世紀あたりの「源氏物語」の時代にもクラシック音楽はある。例えば、しばらく前にヒーリング・ブームに乗って大ヒットした「グレゴリオ聖歌」。そして、それこそ紫式部なみの才女というべき女性作曲家ヒルデガルド・フォン・ビンゲンによる音楽(これも、彼女の音楽を自由に翻案した「聖なる火」というアルバムがあって、なかなか美しい)。どちらも、世俗を超越した不思議で神秘的な音楽宇宙が聴ける。

01 「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」(NML)の作曲家一覧のページ。
約13,000人の作曲家の作品が収録されており、この世に存在する作曲家の数の多さに驚かされる。
(画像をクリックすると、作曲家一覧のページが開きます)
もうひとつはその逆で、現代の作品。新しくて出来たてだったり、ヨーロッパ中央楽壇に属する作曲家でなかったりすると、「名作」と認定されるのに時間がかかる。なので、まだ「世に知られていない名作」や「これから売り出し中の作品」がごろごろしているのである。
難解で分かりにくいと言われることの多い現代作品だが、聴き方によってはシュトックハウゼンやクセナキス、あるいは
リゲティやペンデレツキなどのいわゆる前衛音楽は、ホラー&スプラッター映画ばりのノイズ・サウンドが気持ちいいし、ミニマル音楽の大家ライヒやグラスといった作曲家の音楽は、きわめて映像的で現代音楽の枠を越えて若者にも聴かれている。
さらにアメリカ(例えば、人気作曲家
コリリアーノ、大御所カーターなど)やロシア(ショスタコーヴィチ以後の世代の巨匠シュニトケ)、ポーランド(「悲歌のシンフォニー」が世界的ヒットになったグレツキ)、北欧(人気のラウタバーラ)、中国(才気あふれるタン・ドゥン)などなど、知る人ぞ知る作曲家は少なくない。

02 現代作品には、古典音楽では存在しなかった珍しい楽器編成による、斬新な響きを楽しめる作品が多い。
画像:アメリカの作曲家ジョン・アダムズ(1953~)の作品の演奏風景
出典:John Adams A Portrait and a Concert of American Music (ARTHAUS MUSC DVD 100 323)©2009 Arthaus Musik GmbH
もちろん、日本も負けてはいない。我が国のクラシック音楽黎明期の大作曲家山田耕筰から始まって、ゴジラの音楽で知らぬ者のない大家 伊福部昭、戦後現代音楽界のチャンピオン武満徹、ラジオやTVや本などでクラシックの啓蒙も果たした團伊玖磨、芥川也寸志黛敏郎などの有名どころ、そして私、吉松隆のような「まだ生きている」作曲家に至るまで、色々な作品がライブラリで聴ける。

NAXOSでは日本の作曲家のシリーズを録音していて、特に戦前の作曲家の知られざる名品の掘り起こしは画期的な成果をあげている。
例えば「神風協奏曲」などという仰天ピアノ協奏曲を書いた関西の天才作曲家大澤壽人ヒロシマをテーマに巨大な交響曲を書いた社会派大木正夫、戦後の日本の復興エネルギーを象徴するかのようなモダニズムのセンスにあふれた黛敏郎などなど「こんな凄い曲が我が国の作曲家によって書かれていたのか!」と目から鱗の逸品がずらりと並ぶ。
ライブラリの「作曲家一覧」には、作曲家の名前が生年没年と一緒にずらりと並んでいるから、その中から「聴いたことのない作曲家」あるいは「年代が凄く古い作曲家」、逆に「ものすごく若い作曲家」などをピックアップして、一体どんな曲なのか聴いてみるのも面白いのではなかろうか?
そこで出会う「自分だけの音楽」、それこそが未来の「クラシック」なのである。
= 今月のお勧めアルバム(その1) =

画像をクリックすると、NAXOS MUSIC LIBRARY の各アルバムのページが開き、それぞれのアルバムは、全曲を冒頭30秒みの無料で聴くことができます。

03 ~空想 安土城御前演奏会~信長公ご所望の南蛮音楽「王のパヴァーヌ」(演奏:平尾雅子(ヴィオラ・ダ・ガンバ












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