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2009年1月 1日 (木)

クラシック漫遊ガイド(1)マジカル・クラシック・ツアーへのお誘い

音楽はいまやネットを使って、いつでも聴きたい曲を聴ける時代。クラシック音楽にスポットを当て、大人としての贅沢な楽しみ方を、当代きっての作曲家・吉松隆氏がご紹介します。 (編)

みなさんは自分が大好きな音楽を、何で聴いて育った世代だろう? コンサート?、テレビ?、レコード?、CD?。
もちろん「音楽はコンサートでの生演奏に限る!」というのも真理だけれど、例えば私は、ロックもジャズもクラシックもステレオLPで聴き親しんだ世代。作曲家を志したのも(コンサートでの生演奏ではなく)LPで聴いたベートーヴェンがきっかけである。
カートリッジやスピーカーに懲り真空管アンプを手製して、30センチLPを宝物のように愛でて聴いた「マニア」世代はもう60代を越えているだろうか。私はそれよりちょっと下で、LPをコレクションするほかに、オープンリールやカセットテープでせっせとFMからエアチェックするのが日課の「おたく第一世代」だ。
そしてCDの登場が1980年代。LPではなくCDをコレクションし、ラジカセやウォークマンで屋外でも音楽を聴き始めた世代がかれこれ40代。さらに、物心ついた時から音楽はCDが当たり前で、LPなど見たこともないという若い世代も、もう30代のはず。
そして、ここ数年は、ネットから好きな音楽をダウンロードしてiPodで聴く、という新しい聴き方が広まりつつある。
音楽の聴き方は、なんとも凄いスピードで変化しているのである。

でも、そもそも昔々は、こういう音楽の聴き方などあり得なかった。
まだCDどころか電気機器すらない時代、音楽はコンサートや劇場あるいはお祭りや酒場などそれなりに人の集まった場所に出かけ、そこで演じられる演奏を聴くしかなかった。
自分で歌ったり楽器を演奏できるならともかく、「好きな時に好きな音楽を聴く」などというのは、お抱えの楽士を雇うような財力がある金持ちか貴族にしか許されない贅沢だったわけだ。
01_3 大オーケストラの演奏風景。
一回のコンサートだけでも開催に何百万円もかかる。

ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」演奏風景
演奏:スペイン国立ユース・オーケストラ
指揮:ホセ・セレブリエール
c2008 Naxos Right International Ltd

さらにオーケストラやオペラを聴くというレベルになると、どんな金持ちでも貴族でも遠くの劇場まで出向いて行って、何日の何時から、演目は何、と決められたものを鑑賞するしかない。

かつてルードヴィヒ二世という王様は、自分の好きな(ワーグナーの)オペラを自分の城で聴く…という夢に取り憑かれたが、それは国が傾くほどのお金を必要とした。「好きな音楽を好きな時に聴く」というのは、ちょっと前までは大富豪や王侯貴族でもできない「贅沢中の贅沢」だったわけである。
02 こんな大掛かりなオペラも今や、誰もが好きな時に好きなだけ聴ける時代に。
ヴォルフ=フェラーリ:オペラ『抜け目のない未亡人』上演風景
演奏:ヴェネツィア・ラ・フェニーチェ歌劇場管弦楽団・合唱団ほか
指揮:カール・マルティン
c2008 Naxos Right International Ltd

それが、今はできる。
しかも、いとも簡単に。
なんという時代になったのだろう。
CDにパックされた音楽を買ってくれば、誰でもいつでも好きな音楽が聴ける。あるいはテレビやDVDで、コンサートでもオペラでも自由に(しかも字幕付きで!)鑑賞することができる。
さらに、朝、好きな時間に好きな音楽を聴くことだって、ポケットの中に音楽入りの小箱を忍ばせて歩きながら聴くことだってできる。そして、インターネットに繋いだPCで、好きな音楽を検索し試聴しダウンロードして購入することすらできる。もう魔法の世界である。
とすれば、こんな時代にこそあり得る「新しい音楽の聴き方」がないわけがない。
というわけで今回、特にスポットを当て提唱するのは、ネットでの連載をお読みになっている方々にお勧めの「ネットで聴く音楽」。しかも(コンサートやCDでは今いち敷居が高そうな)「クラシック音楽」に敢えて焦点を当ててみた。
03
c2008 Naxos Right International Ltd

ネットを経由して、いざクラシック音楽の豊穣な世界へ!
なにしろクラシック音楽の世界は、オーケストラからオペラからピアノから室内楽から歌曲から、ここ2~300年ほどの西欧の才能ある音楽家たちが作り上げた名曲佳品が(ほとんど著作権フリーで)目白押し。これはもう人類の音楽のお宝を集めた「宝物殿」と言っても過言ではない。
その宝物殿への入り口が、あなたのPCとネットで繋がっている。これは、ちょっと探検に出かけてみるしかないではないか。
例えばNAXOS(ナクソス)のミュージック・ライブラリーなら、レパートリーは古今東西(古くはルネサンス・バロックから新しい現代モノまで)併せて数十万曲。どれを選ぶか迷ってしまう…という最高の贅沢が体験できる。
ここは、有名曲・人気曲から聴くのもよし、ベートーヴェン、バッハ、モーツァルトなど有名どころから攻めるのもよし。
コンサートと違って、退屈で爆睡しても、つまらない曲を飛ばしてつまみ食いしても、誰にも気兼ねがいらない。むしろ、それを逆手に取って「長くて渋くて、とても生のコンサートでは聴けそうにないマニアックな音楽」を攻めるのも一興。
今さら「運命」「未完成」「新世界」じゃ初心者みたいで恥ずかしい…となれば、例えばヴォーン・ウィリアムスの交響曲9曲とかバルトークの弦楽四重奏曲6曲などを「聴破」(走破みたいなものだ)してみるのもよし。
あるいは誰も知らない作曲家(特に現代)の知らない曲に目を付けるのも、カードをめくって何が出るかドキドキするような気持ちが味わえて楽しいかも知れない。
これぞ、100年前にはどんな王侯貴族も大富豪もできなかった究極の贅沢であり、音楽三昧である。
さあ、ネットでクラシック音楽豪遊の旅へ、いざ!

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