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2009年1月 1日 (木)

クラシック漫遊ガイド(2)クラシック最初の一曲

皆さんは、最初に意識して聴いたクラシック音楽を覚えていらっしゃいますか。小学生の頃に聴いた曲から、映画音楽で使われた曲、ロック世代向けの現代音楽まで、当時を思い出しながら改めて聴きなおすのも一興、新しい発見があるかもしれません 

最初に出会うクラシック…というのは、人によっていろいろだ。
私の場合、最初にそれと意識して聴いたクラシックは、中学生の時に買った「運命」「未完成」のLP。でも、それ以前、小学生の頃に愛聴していたのは(父親のレコード・ライブラリにあった)輸入盤の「青少年のための管弦楽入門(ブリテン)」と「ピーターと狼(プロコフィエフ)」のカップリング盤だった。
2曲とも20世紀の作品だが、子供や青少年向けにオーケストラを紹介した曲であり、いろいろな楽器が登場し組み合わさって、さまざまなキャラクターの音楽が出来てゆくのが(子供心に)実に面白かった。今、オーケストラの作曲家などをやっているのは、この1枚のせいかも知れない。

ちなみに父親は、若い頃アマチュアのオーケストラでフルートを吹いていたこともあり、いわゆるクラシック愛好家。そのせいで「運命」「田園」「第9」のような大名曲のスコア(総譜)はなにげに持っていたが、なぜかそのレコードはライブラリになかった。

今から思えば、みんなが聴いているような「有名すぎる名曲」は、聴くのが恥ずかしかった(そして、人と同じものを聴くのがいやだった)のかも知れない。だからだろうか、先のブリテン&プロコフィエフを始め、ドビュッシーやラフマニノフあるいはショスタコーヴィチなど、(1950年代当時としては)かなりマニアっぽい近現代の曲がレコード棚に並んでいた。
私も、初心者向けとされている「超有名曲」は随分長いこと恥ずかしくて聴けなかった(真っ当に聴けるようになったのは、プロの作曲家になって20年ほどして、この種の曲の楽曲解説などをしなければならなくなってからだ)から、父親の気持ちが良く分かる。

一方、近所にオーディオ・マニアの叔父がいた。真空管アンプを自作し高級カートリッジを買い集めスピーカーのために部屋を改造してしまうほど音響機器に凝っていた彼は、音楽はとにかく「オーディオ的においしいもの」という指向に徹していた。
その当時(1960年代)としては、モダン・ジャズ(マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンなど)の名盤が真空管アンプや手作りスピーカーには(雰囲気も)ピッタリだったが、フル・ボリュームでオーディオを鳴らすのに最高なのは、やはり大編成のオーケストラだったようだ。
その叔父の一番のお気に入りは「惑星(ホルスト)」。現在では「ジュピター」のヒットで大人気名曲の仲間入りをしているが、当時はまだ古いステレオLPしかなかった時代だから、先見の明があったと言うべきだろう。冒頭のダイナミックなリズムが炸裂する「火星」から、壮大華麗な「木星」など聴き所も多い組曲で、フル・オーケストラが色彩的にバンバン鳴るのが、確かに「オーディオ的に」おいしい名品である。
そもそも、ジャズやロックに耳慣れた世代にとっては、いくら「名曲」とは言えベートーヴェンやブラームスは古すぎるのも事実。なにしろ、彼らが生きたのは日本で言うなら江戸時代後期からせいぜい明治の文明開化の頃。馬車が世の中で一番速い乗り物だった時代の音楽なのだ。現代のような自動車や飛行機が疾走する時代のスピード感と比べるべくもない。

でも、そんな現代のビート世代も唸らせるクラシックの名曲がある。「春の祭典(ストラヴィンスキー)」だ。これは、20世紀になって書かれたいわゆる〈現代音楽〉で、変拍子(一小節ごとに拍子がころころ変わる!)や不協和音(ハモらない刺激的コードが耳をつんざく!)が炸裂する一筋縄ではいかない複雑な曲。しかし、後のビッグバンド・ジャズやブラス・ロックに通ずるビート感とドライヴ感があって、ロック世代にとっては「こんなクラシックもあるのか!」と耳からウロコの音楽体験になるはずだ。
なにしろ元々はバレエ曲なのに優雅さはゼロ。全編ほとんどヘビメタとか前衛舞踊に近い「原始の響き」が疾走する。しかし、それが圧倒的なオーケストラ・サウンドと相まって、独特な音響世界を繰り広げる。「古き良き」クラシックがお好きな方は顔をしかめるような耳をつんざくサウンドだ(実際、初演の時は大騒ぎになったそうだ)が、これも「オーディオ的」に聴いて実に面白い音楽と言える。
01「春の祭典」のオーケストラのスコアの1ページ。約20種類の楽器が並んでいる。
これだけの音符がありながら、このページの演奏時間はわずか3~4秒程度。
1時間のオーケストラ曲を書くのに一体どのくらいの音符が必要か?と考えると、その労力は想像を絶するものがある。
対して、お洒落に華麗でロマンティックなクラシック・サウンドに浸りたいなら、その入口に最適なのはラフマニノフのピアノ協奏曲第2番だろうか。そもそも「逢い引き」(1945年、D.リーン監督)という恋愛映画に使われて世界的人気を博した曲なので、「映画音楽みたい」な音楽の元祖中の元祖。濃厚でむせかえるようなロマンティックな世界が全編に充ち満ちている。
02ピアノの演奏風景。一台の楽器でオーケストラに匹敵する多彩な表現が可能。
そのピアノとオーケストラが合奏する「ピアノ協奏曲」は豪華な音楽絵巻そのもの。

リスト:「スペイン狂詩曲」演奏風景
ピアノ演奏:コンスタンティン・シチェルバコフ
c2008 Naxos Right International Ltd

もっともこの曲、オーケストラは主題となるメロディを甘く切なく歌うが、協奏するピアノは「さすがクラシック」と唸らせる超絶的なテクニックで疾駆する。この不思議なバランスがこの曲の最大の魅力だろう。
ブランデーかワインのグラスでも傾けながらゆったりクラシックの世界に浸る…というような聴き方も、熱っぽくピアニストの圧倒的なテクニックに酔いしれる…というような聴き方も出来るという「二度おいしい」至高の逸品である。

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